亡き夫の言葉
夫がまだ病気の気配もなく、元気だった頃
不意に
「けいとだまは俺と別れても絶対再婚できるな」
と、言ったことがある。
たぶん、何か
テレビを見ていての話だと思うんだけど。
私が
「まだ女として見てもらえるかな？イケるかな」と聞くと
「すぐ寄ってくるわ」と嬉しい言葉。
そのあと夫は、なぜかしみじみと
「俺が生きとる間は絶対イヤやけど、おらんようになったら再婚してもええわ。てか、再婚せえ。ひとりでは心配やでな」と。
このときは、全くそんなこと考えもしてなかったから
「今度は同じ年か年下のイケメンがいいな」とか言って
笑ってたのに。。
まさか、そのあと
ホントにいなくなっちゃうなんて…
夫も「マジか？」って思ってるよね、きっと。。
死んじゃった今でも、ホントに思っているのかなぁ
再婚しろよって。
今のところ、できそうにないけどね。
生涯ひとりだけでいいよ、看取る相手は。
もう誰の最期も見たくない。。
もうひとつ、すごく心に残っている言葉がある。
夫が入院していた頃
ほぼ1日中、夫に付き添い
寝返りや体拭き、おしっこやウンチの世話など
ほとんどの世話をしていた。
夫は当初、私のことを
「絶対そういうことをしないタイプの女」だと思っていたらしく。
私にも
「もう自由にしてええよ。あとは実家にしてもらうで」
と、入院してすぐの頃、言っていた。
私の見た目の雰囲気と
少し潔癖なところがあるからだと思うんだけど。
夫が健康で、元気なときに
ウンチで汚したりしたら、絶対自分でやらせて
私はやらない人だとは思うr(^ω^*)))
何気ない言葉で傷付く
周りからも、相当、意外がられた。
「けいとだまが旦那の下の世話するなんて思わんかった。私にはムリやわ～」と。
ムリだとか、言ってられない状況を
経験していない人は、皆
「私にはムリやわ。ようせえへんわ。あんたはすごいわ。強いなぁ」
と、言ってくる。
義母にも言われた。
私だってムリだったよ。
出来ないって思ってたよ。
すごいってなにが？
強いってどこが？
ただ否応なしに、そういう状況に追い込まれて
弱かろうが
泣いていようが
出来ないって叫ぼうが
やるしかなくなったんだよ。
ムリなんて選択肢は無かったから。。
夫がいなくなってから
周りの何気ない言葉で…
悪気のない言葉で…
傷付くことが増えた。
亡き夫が残してくれた言葉
夫が亡くなる数日前に
私に言ってくれた言葉が、とてもうれしくて
ずっと支えてくれている。
「けいとだまは、エエ女やな。長年一緒におって、つくづくエエ女やと思うわ」
「酸いも甘いも、表も裏も、傍でずっと見てきた人間が言うんやから、間違いない」
「けいとだまはエエ女や。自信もってええ」
「エエ女を嫁さんにして、こんな世話までしてもろて、ひとり占め出来て、男冥利に尽きるな」
「俺は幸せモンやわ」
ベッドで横になったまま、目をつむって
ポロッと涙をこぼしながら、言ってくれた言葉。
誰よりも私を知る人から
エエ女だと言われることの重み。
すべてに自信がなく
すぐ引っ込んでしまいがちな私は
夫に言われたこの言葉を心の中心に置いて
ずっと支えてもらっている。
葬儀のとき、義弟も言っていた。
「結婚とか興味なかったけど、あんたと兄貴見とったら兄貴が羨ましなったわ」
「嫁さんにかいがいしく世話されて、最期も最愛の嫁さんに看取られて、男としてええな思たわ」
「俺にはそういう相手おらんからな」
夫もそう思ってくれてたら、いいな。。
引きこもってた頃は
私は何も出来ない
世の中に入っていけない落ちこぼれ
隅っこに追いやられたクズだと思っていた。
いつも不安で、何かあったらどうしよう
私には何も出来ないって思っていた。
…そんな私に、まさか
こんな大きな出来事がやってくるなんて
思いもしなかった。
訳も分からないまま
無我夢中でここまでやってきて
今もまだ手は震えるし、すぐに熱を出すし
へなちょこのまんまだけれど
でも…
あの頃よりは、少しは成長しているのかな。。
夫からも、現実からも逃げずに
最期まで頑張った自分に
少しだけ自信をもてるようになった。
亡き夫からもらった言葉たちも
私を支えてくれている。
今の私の大切な宝物だ。
これからもきっと
心が揺れそうになるたび
亡き夫の言葉に支えられていくんだろうな
私は。
夫の姿は無いけれど
こうしていろんな形で
ず～っと私を守ってくれてる夫。
ありがとうね、夫ちゃん。
すべての人が、幸福に包まれますように(*˘︶˘*).｡.:*♡